「GEIBUN16」卒業・修了研究制作紹介 No.3 大塚直
2025.02.12
芸術文化学科 学部4年 大塚 直
卒業制作「プロローグ ー高岡古城公園と3棟の図書館が紡ぐ居場所の体験ー」、副論文「目的地に到着するまでの歩行体験が居心地に与える影響」の展示を高岡市美術館で行っています。
研究では、「目的地に到着するまでの歩行体験が居心地を高めるのではないか」という仮説をもとに、高岡古城公園(以下、古城公園)でアンケート調査を行いました。具体的には、古城公園の小竹藪広場に滞在する公園利用者を対象に、小竹藪広場に到着するまでの歩行体験と広場到着後の居心地についてそれぞれ評価していただきました。
その結果、①広場に到着するまでの歩行の質を高く評価する人は広場における居心地が良い。②特に、歩行中に「見ていて楽しいものがたくさんある」ことが広場における居心地を高める。③広場に到着するまでの歩行体験を気に入っている人は広場における居心地も高い。④広場に到着するまでの歩行体験が到着後の居心地に与える影響を実感している人は広場における居心地が高い。ということが明らかとなり、目的地に到着するまでの歩行体験が居心地に与える影響があることが分かりました。
制作では、調査を行った古城公園を対象に3つの小さな図書館を設計しました。コンセプトは「古城公園の新たな『道』、そして『居場所』となる図書館」です。図書館を新たに計画することで、図書館が新たな「目的地」となる一方で、広場での滞在や散歩を目的として訪れる人にとっては図書館は新たな「道」として捉えられると考えました。3つの図書館はそれぞれ、まわり道、より道、うら道というキーワードを元に設計し、目的地に直行するだけでは見られない、得られない歩行体験を提供する仕掛けを考えました。さまざまな目的で古城公園を訪れる人々がそれぞれ充実した歩行を体験し、それぞれの目的地で居心地を高めることを目指しています。
この研究の仮説である「目的地に到着するまでの歩行体験が居心地を高める」に着目したきっかけは、千早茜さんの著作「西洋菓子店プティ・フール」の一節です。主人公が最寄駅を降りてからお店に到着し、店員さんと談笑しながら商品を購入するまでの一連の体験が描写されており、主人公はその全ての体験を求めてお店を訪れていました。自分のお気に入りの場所に置き換えて考えたとき、その場所で提供される商品や雰囲気を気に入っているというのはもちろんですが、そこに向かうまでにまち並みや人々の様子、天気、木々などを眺めることで気分が高まり、居心地につながっていると感じました。そしてその一連の体験に価値を感じ、再び訪れたくなるのだと気がつきました。また、私の地元である福岡での生活と比べ、富山での生活は車移動が多く、目的地に到着するまでに歩く距離や時間が短いことから、アプローチ空間の設計によって体験を豊かにすることができるのではないかと考えています。
今回の研究を通して、目的地に到着するまでの歩行体験と居心地の関連性について明らかにできたこと、またアンケート調査によってたくさんの方に自分の考えを共有することができたことを嬉しく思います。そして、よく通っていた私のお気に入りの場所である高岡古城公園で研究・制作ができたことが嬉しいです!古城公園を訪れたことのある方、高岡に住む方々に、ぜひご覧いただきたいです!




会期|
2025年2月8日(土)〜 2月16日(日)9:30〜17:00(入館入場は16:30まで)
※2月10日(月)は休館
会場|
第1会場:高岡市美術館、第2会場:富山大学高岡キャンパス