よっさまちづくり会議

高齢化する伝建地区を創発せよ

期間
2021年4月〜

概要

2020年に重要伝統的建造物群保存地区に選定された富山県高岡市吉久。そこでは、まちづくり活動の主体の高齢化や、まちづくり活動に対する住民間での意識格差などの課題があります。このような現状を踏まえて、公民学が協働し、連続まちづくりワークショップ「よっさまちづくり会議」を企画運営しています。よっさまちづくり会議は、①吉久の将来像を明確化し、住民の間で共有するための「場」をつくること、②まちづくりの新たな参加者や担い手を発掘する「機会」をつくることを目的としています。地域の魅力や課題、将来像を話し合い、それに基づき、空き地や空き家、通りなどの低未利用地を活用した実験的な小さなアクションの企画から実践までを行っています。この活動を通して、これまであまりまちづくり活動に参加していなかった住民が、学生と協働し、小さなアクションの企画運営をするなど、新たなまちづくり活動の担い手の発掘や育成につながっています。

よっさまちづくり会議は、住民や学生がやりたいと思った小さな活動を多様な主体の協働によって実現するためのプラットフォームです。ここで参加者は新たな人とつながり、思いを共有し、それをかたちにしていきます。まずはやってみたいと思ったことを、小さくても良いので試しにやってみることが重要で、そうした小さな活動の実践・検証の積み重ねによって、まちは少しずつ変化していきます。ここから生まれる多様な活動を育てていくことにより、まちを育てることにつながります。

よっさまちづくり会議では、まず地域の課題や魅力に関して話し合うこと、また、まち歩きを通して地域資源の発掘・整理を行うことから始めました。そして、地域の課題解決に向けて、整理した地域資源や魅力を生かして何をやってみたいのか、それぞれが実現したいことを話し合いました。住民の方々が主体的に関われることからボトムアップ式にまちの未来ビジョンを考えることで、具体的に想像しやすくなり、さらには住民の方々の主体性や機運を高められると考えました。そのようにして、ワークショップで話し合ったやってみたいことを未来ビジョンとして視覚化することで、住民のみなさんがそれぞれ思いをかたちにすることによってまちがどのようになるのか、その将来像を共有するために「やってみよっさコレクション」を描きました。

2023年度からは、これまでのワークショップで話し合ってきた内容をもとに、「空き家」「空き地」「通り・軒下」の活用という3つのテーマを設定しました。そして、住民と学生がテーマごとのチームをつくり、小さな活動の企画・実践・検証を行いました。空き家活用チームでは、多世代交流の場をつくることを目的に、住民の方から集めた昔の写真とそのエピソードの展示と、駄菓子の販売を行いました。空き地活用チームでは、野菜や花を育てる園芸活動や収穫祭、ベンチ・タープづくりなどの人が集うための環境整備を行いました。通り・軒下活用チームでは、吉久の様々な通りの魅力を可視化するために、通りに名前をつけてマップをデザインし、それをシルクスクリーンで印刷した手ぬぐいを制作しました。これらの活動では、住民と学生がそれぞれのスキルや能力を生かし合う多様な協働が生まれ、それらの相互作用に基づく新たな価値創造が実現しました。こうした協働は、まちと人が共に成長していく可能性を秘めています。
(文:重山隼人)

体制図

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