あけぼのテラス

どうしたら幸せに縮小していけるのか?

期間
2018年4月~

概要

戦後から高度経済成長期にかけて全国各地で建設された公的集合住宅団地。それらは、老朽化や空室増加等の課題が深刻化し、一部の住棟を取り壊し、ある一定の区域に居住者を集める集約化が計画・実施されています。本プロジェクトの対象は、北海道札幌市真駒内に位置する「あけぼの団地」。
あけぼの団地も他の団地と同じく、現在集約化が段階的に進められています。集約化においては、居住者が転居する必要があり、これまでのコミュニティが分断されてしまうという課題があります。このような状況の中で、どうすれば居住者にとって幸せなかたちで集約化していくことができるのかを探究しています。

高齢化の深刻化するあけぼの団地においては、今後団地居住者だけで団地を持続していくことが難しく、団地の外の人と連携していく必要があります。そこで、団地の集会所やオープンスペースといった空間資源を団地内外の人が協働で活用・運営することで、団地内外のコミュニティネットワークが形成され、集約化によるコミュニティの分断の課題が解決できるのではないかと仮説を立てました。そしてその仮説検証として、2018年から毎年継続的に実証実験「あけぼのテラス」実施し、コミュニティ形成に有効なプログラム開発と担い手創出に取り組んでいます。これらを通して、幸せな集約化の方法論の構築を目指しています。

あけぼのテラスは実証実験です。住民へのアンケート調査やワークショップを通してニーズを把握し、それに基づき、団地内外のコミュニティ形成のためのプログラムの実践・検証を繰り返し行うことで、有効なプログラムを開発しています。

これまでに団地の集会所やオープンスペースを活用し、食や健康、芸術をテーマに実証実験を行ってきました。実践と検証を繰り返した結果、これまで自治会活動などに参加していなかった団地住民や団地外の方々の参加が見られ、団地の空間資源を団地内外で共有することで、新たな団地内外コミュニティ形成の場としての可能性が検証できました。さらには、そうした場を多くの人と共有することで、団地の未来の姿を共有することができ、共感の輪が少しずつ広がっています。一方で、参加する層の偏りも見られることから、今後は多角的なアプローチを検討し、さらなる検証が必要だと考えています。

あけぼのテラスは、団地を管理運営するUR都市機構、あけぼの団地自治会、大学、さっぽろまなびまくり社が協働で開催しています。実験を始めた当初は大学が主導して行っていましたが、ワークショップや定例会を通して少しずつ協働のかたちが構築され、高校生や周辺地域のお店など、団地の枠組みを超えた多様な人々が関わっています。高齢化が深刻な団地においては、コミュニティの運営力の低下が課題ですが、そうした団地において団地外の多様な主体との連携は運営力の補強につながります。
あけぼのテラスを通して、団地のオープンスペースで多様な主体が関わり、同じ空間と時間を共有することで、未来のビジョンを実現するための担い手が育っていくことが期待されます。
(文:安倍ひより)

体制図

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