「GEIBUN16」卒業・修了研究制作紹介 No.7 森豪大
2025.02.13
人文社会芸術総合研究科 修士2年 森 豪大
修士論文「高校生におけるUターン意向の形成に向けたシビックプライド醸成メカニズムの解明」とその内容を取りまとめたバナーの展示を高岡市美術館で行っています。
修士論文では、学部時代から取り組んでいる高校生のシビックプライドとUターン意向の関係を明らかにする研究を行っています。シビックプライドとは、都市に対する市民の誇りとされ、当事者意識の基づく自負心を含んでいるとされています。進学や就職等で地域外に流出する前の高校生段階においてシビックプライドを醸成することにより、Uターン意向が高まり、将来的に地元に帰ってくる人が増えるのではないかと考え研究に取り組んでいます。
研究内容としては、成人を対象とした研究で明らかにされているシビックプライド醸成メカニズムが高校生にも適応できるかを検証し、シビックプライドがUターン意向に与える影響を分析しました。次に②地域特性に応じたシビックプライド醸成メカニズムとUターン意向の関係を明らかにしました。最後に③人口減少が進む韓国との国際比較を通じて、シビックプライド醸成メカニズムとUターン意向の類似点と差異を明らかにしました。調査は、歴史文化都市の富山県高岡市、農漁村地域の富山県氷見市、工業都市の山口県宇部市、歴史文化都市の韓国安東市の高校生を対象に行いました。
研究結果としては、成人において確認されていたシビックプライド醸成メカニズムが高校生にも適用可能であることが示されましたが、「食」の源泉から「愛着」への影響が見られないなど、年代間の差異が示唆されました。さらに、歴史文化都市の高岡市、農漁村地域の氷見市、工業都市の宇部市における分析では、地域特性に関わらず地域への愛着がUターン意向を高めることが確認され、各地域の成り立ちに関わる産業や文化が地域への愛着の形成に寄与することが明らかとなりました。韓国の安東市との日韓の比較では、文化や国民性が異なる国でも地域への愛着がUターン意向を高める共通点が見られた一方、安東市では地域への参画意識がUターン意向に負の影響を与えることを明らかにし、国による差異を示しました。これらの成果は、人口減少が進む日本および韓国において、高校生のシビックプライドを高めるための地域特性や国の文化に即した行政施策や教育プログラムの立案に寄与する知見を提供するとともに、それによるUターン人口増加に貢献できると考えます。
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この研究に取り組んだ理由は、私の中高時代の経験にあります。私は宮崎県で生まれ、その後、茨城県で生まれ育ち、中高は高知県にて一人で寮生活をしていました。高校時代に、「地元にはなにもない、つまらない」と地元出身の同級生が言っていました。高知は自然が豊かでご飯もおいしい魅力にあふれた町なのに、なぜ「つまらない」と言うのだろうという疑問を持っていました。高校時代に地域への愛着がないから将来的にUターンする人も少なく、人口減少が加速するのかな?という高校時代に感じた問いへの探究を続けた成果をこの修士論文でまとめることができたと考えています。まだまだ至らない拙稿ではありますが、ご一読いただけますと幸いです。
末筆にはなりましたが、辛抱強く研究のご指導いただいた籔谷先生、修士課程を過ごした同研究室のいつも頼りになる先輩、切磋琢磨できる同期、刺激を与えてくれた後輩とはゼミを通じて多くの議論を重ね、多くの学びと成長の機会を得ました。心より感謝いたします。
(文:森 豪大)
会期|
2025年2月8日(土)〜 2月16日(日)9:30〜17:00(入館入場は16:30まで)
※2月10日(月)は休館
会場|
第1会場:高岡市美術館、第2会場:富山大学高岡キャンパス