よしひさえん

空き地が育む多世代コミュニティ

期間
2022年4月〜

概要

2020年に重要伝統的建造物群保存地区に選定された富山県高岡市吉久(以下、吉久)は、地域コミュニティの希薄化、空き地の増加に伴う生活環境の悪化といった課題があります。しかし、通りに面した空き地は、まちづくり活動を実践する上での視認性が高く、多様な使い方を許容できるため、人的ネットワーク形成の場になり得ると考えられます。そこで、空き地を活用したまちづくり活動を行うことで、空き地問題を解決するだけでなく、様々なネットワーク形成につながり、新たなコミュニティの形成において有用ではないかと考えました。このような仮説に基づき、2022年度から地域住民所有の空き地を暫定的に「よしひさえん」と名付け、多世代交流を目的とした活動に着手しています。具体的には、地域住民と学生の協働によって、園芸や共食などの食をテーマとした活動や、ベンチづくりやタープの設置といった環境整備に取り組んでいます。

近年、コミュニティガーデンがオープンスペースを活用した多世代交流の場として注目されています。これは、園芸や野菜販売などの「食」に関する活動が、世代を超えたコミュニケーションの機会として有用であるからだと考えられます。そこで、「食」をテーマとしたプログラムの試行的実践を行いました。その結果、これまでまちづくりに主体的に参加している高齢者に加え、参加していない若者の参加が確認されました。さらに、住民の多様なスキルを活かせる活動(園芸・調理・飲食・振舞・工作等)を内包していることにより、多世代ネットワーク構築につながっていることが解明され、多世代型コミュニティ形成に有効なコミュニティプログラムを開発するための知見を得ることができました。今後は、住民主体によるコミュニティプログラムの企画実践を支援し、持続化に向けた活動体を形成することが課題として挙げられます。

2023年度からは、よっさまちづくり会議において、よしひさえんの活用をテーマに、学生と住民が協働でプロジェクトに取り組んでいます。ここでは、野菜を育てる園芸活動に加え、日常的に地域住民や吉久を訪れた方が、よしひさえんで快適に滞留することができる魅力的な環境づくりを行っています。これまでに、日陰をつくるタープやオリジナルのベンチづくりを行いました。それにより、育てている野菜や花を眺めながらコミュニケーションが行われたり、住民の方の散歩コースになったりと、少しずつよしひさえんが住民にとって価値のある場となっています。
(文:重山隼人)

体制図

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