「GEIBUN17」卒業・終了研究政策紹介 No.3 上田乃々佳

2026.03.07

芸術文化学科 学部4年 上田 乃々佳

「景観認知が主観的幸福感に及ぼす影響 ーキャプション評価法を用いた検証ー」

私は「景観認知による主観的幸福感への影響 ―キャプション評価法を用いた検証―」というタイトルで卒業研究に取り組みました。本研究の成果は高岡市美術館にて展示しています。

本研究は、景観を認知することによって生じる主観的幸福感(自身で感じる幸せ)の変化や、その際の感情状態などの影響を明らかにすることを目的としています。さらに、属性による違いや、主観的幸福感が高まりやすい景観構成要素、景観の見方についても分析を行いました。

この研究の背景には、私自身が幼い頃から景色を見ることで幸福感を覚えたり、作品制作において景色からインスピレーションを受けたりしてきた原体験があります。これまでの研究では、自然と触れ合うことによって幸福度が向上するなど、さまざまな心理的効果が明らかにされてきました。しかし現代では、スマートフォンなど電子機器の常時使用により、目の前の景観に意識を向けたり、能動的に自然に触れたりする機会が減少していると考えられます。そこで私は、日常の中で目にする景観に対しても、私が感じてきたような幸福感を他の人も感じることができるのではないかと考え、本研究に取り組みました。

調査では、日本人の高校生・大学生、およびオーストラリアの大学生を対象に、富山県氷見市久目地区を歩行してもらいました。参加者には、気になった景観を撮影してもらい、その景観が気になった理由を記述するとともに、心理状態の変化について回答してもらいました。

その結果、景観を意識的に捉えることによって主観的幸福感が高まり、ポジティブ感情やリラックス感情が生じる傾向が見られました。また、水辺環境や視界が開けた場所、身を隠せるような場所などの景観要素において、主観的幸福感がより高まりやすい傾向が確認されました。これらの環境は、生物が進化の過程において生存確率が高かった環境とも関連していると考えられます。

さらに、主観的幸福感を高めるためには、景観をただ眺めるだけではなく、自身が何を捉えているのかをメタ認知し、それによって自分がどのようなことを感じ、考えたのかを解釈する過程が重要であることが示されました。また、全体的に外国籍の被験者の方が主観的幸福感が高い傾向が見られました。これは、見慣れていない景色に対しては感性がより働きやすいことが一因であると考えられます。

展示では、美術館に来場された鑑賞者の方にも、景観認知における解釈行為を通して主観的幸福感の向上を体験していただくため、ワークシートを用いた参加型展示を実施しました。調査で被験者が撮影した写真の中からお気に入りの一枚を選び、その写真のどのような景観要素に注目したのか、そこからどのようなことを感じたのかを記述していただきます。さらに、記入したワークシートをパネルに貼ることで、同じ景色でも人によって異なる捉え方があることを共有できる展示としました。他者の解釈を見ることで、新たな景観の見方が生まれることも期待しています。

この展示とワークを通じて、景観の見方や捉え方を体験していただき、日常生活の中でも景観を意識することで幸福感を感じてもらえたら嬉しく思います。

最後に、本調査にご協力いただいた皆様、籔谷先生をはじめ研究室の皆様に心より感謝申し上げます。

(文:上田乃々佳)

会期|
2026年2月27日(金)〜 3月7日(日)9:30〜17:00(入館入場は16:30まで)
※2月2日(月)は休館

会場|
第1会場:高岡市美術館、第2会場:富山大学高岡キャンパス