じじじ屋台
記憶に残る風景をつくる駄菓子屋台
- 期間
- 2023年6月〜2023年11月
概要
駄菓子を販売するための屋台設計のプロジェクトです。じじじ屋台は3つの「じ」のフレームから構成されています。「だがじフレーム」は駄菓子を販売する空間、「え・もじフレーム」は黒板に落書きできる空間、「てんじフレーム」は木のルーバーによる自由度の高い展示空間を作り出します。フレーム内には木箱が収納され、その木箱が屋台周辺にベンチやテーブル・棚として展開します。複数の機能と展開性によって、使い手のニーズに応じた多様な場の創出が可能となりました。それにより、子どもたちの思い出に残り、愛着を育む体験の創出につながることを目指しました。
屋台制作の背景として、富山市婦中町神保地区にある神保公民館を買い物、交通、交流をテーマとする身近な拠点とするための社会実験「神保ぐるっとお出かけDAY」が富山市によって実施されることになりました。その一環として、買い物拠点とするための「じじじマルシェ」が企画され、事前に実施された地元小学生へのアンケート結果から、駄菓子屋を行うことになりました。そこで、じじじマルシェを象徴するアイコンともなる、駄菓子を販売するための什器デザインの依頼を受けたことから、じじじ屋台の開発に至りました。
子どもたちの愛着を育む駄菓子屋台
駄菓子屋は子どもと大人の関わりが生まれることが魅力だと考えています。本設計において、単なる駄菓子を販売する屋台ではなく、地域の多様な年代の人たちの活発なコミュニケーションやつながりが生まれる場づくりを目指しました。屋台は、販売する人と購入する人を空間的に分断させるのではなく、様々な方向から利用できるようにすることで、様々な関係性を許容し、自由なコミュニケーションが生まれるように工夫しました。また、屋台の一部を黒板塗装し、子どもたちが自由に絵を描けるようにしました。好きな駄菓子を選ぶ。地域の大人と関わる。絵を描く。これらの体験が、子どもたちの地域や屋台に対する愛着を醸成することにつながることを願っています。
多様なアクティビティを創発する可変的屋台
じじじ屋台は3つの「じ」のフレームから構成されています。「だがじフレーム」は駄菓子屋空間をつくります。駄菓子を立体的にディスプレイすることで、魅力的な販売空間を設ることができます。子どもたちが駄菓子を買うことを通して、地域の大人の方々とのコミュニケーションが生まれます。「え・もじフレーム」は黒板のある空間です。子どもたちは自由に絵を描くことができるので、屋台の周りにはたくさんの子どもたちが集まります。ここでも会話や絵を通した多様なコミュニケーションが生まれます。また、子どもたちが描いた絵が屋台を彩ります。「てんじフレーム」は、木のルーバーによる自由度の高い展示空間をつくります。木箱をルーバーの間に差し込むことで、魅力的なディスプレイが生まれます。これら3つのフレームは独立しており、連結方法によって三角型やスターハウス型、蛇腹型など、用途や条件次第で様々な使い方ができます。
また、各フレーム内には木箱が収納されており、組み合わせ方次第でベンチやテーブルや棚になります。木箱はステップや看板やスピーカーの台に、屋台は駄菓子だけでなく、CDの販売に使用されるなど、利用者によるいろいろな使いこなしが見られます。こうした屋台の可変性は多様なアクティビティの創発につながります。今後も私たちが想定していなかった創造的な使いこなしが見られることを期待しています。
(文:重山隼人)